破産者情報提供サービスと聞くと、信用情報機関によるブラックリストを想像するかもしれません。しかし、これとは全くの別物で、民間の業者が破産者情報を集めてWEBサイト上で公開しているのが特徴です。役立つ一面もありますが課題も多く指摘されており、破産者を中心に危惧されています。今回は破産者情報提供サービスとは何かを紹介しつつ、掲載された場合の解決方法についても見ていきます。
Contents
破産者情報提供サービスって?概要や業務内容をわかりやすく紹介
どんなサービスなのか
破産者情報提供サービスは、民間業者が自己破産や民事再生などの対象になった人の情報を集めて、サイト上などで公開しているものです。データベースに破産者の氏名や住所などの個人情報が蓄積されており、利用者はシステムを使って検索したり、メールで通知を受け取ったりできます。利用には無料もしくは有料での会員登録が必要なケースが多いため、営利目的で提供されているサービスだと言えるでしょう。
誕生からの経緯と今の状況
この手のサービスが登場したのは、1990年代だと言われています。まだネット上の法的リテラシーが低い時代で、個人に関するデータや機微情報が簡単に流出していました。当然、破産者情報はそのような知られたくない事柄を多く含んでいます。そのため、破産者の情報を集めているサービスの中には、裁判やネットユーザーからの批判によって閉鎖に追い込まれたものもあります。しかし、中には現在も生き残っているサービスや新規に開始した事業があり、破産者情報の提供が続けられています。
公開されている情報とは
個人・法人に関する破産や民事再生などに関する情報がまとめて公開されているのが一般的です。具体的な内容としては、個人なら氏名や住所などの情報と共に事件や種別の裁判所の他、官報掲載日などが公開されています。企業については当事会社はもちろん、関連企業の情報が公開される場合もあるようです。破産手続きに関しては、一般的に開始から免責、修正などの情報を網羅的に盛り込んでいます。
どうやって情報を集めているのか
主に、官報の掲載内容が情報源です。官報は国が発行している機関誌で、法律改正や官公署の人事異動などの情報を掲載しています。その中に、破産者情報も含まれています。破産者情報提供サービスは、そのデータを集めて整理し、提供しています。
情報提供の形態とは
基本的に会員にのみ、公開しているサービスが多いです。会員はデータベースを検索したり、業者によって処理されたデータを受け取ったりできます。中には、予め債務者情報を業者に伝えておき、該当する者がデータベースに加わった時にメールで通知されるサービスもあるようです。
モンスターマップや破産者マップとの関係
以前、物議を醸したモンスターマップ(自己破産マップ)や破産者マップとの関係はないと公言しているサービスもあります。ただし、運営者は異なっても似たような形態でサービス提供を続けるなら、法的または倫理的な問題を指摘される可能性はあるでしょう。
破産者情報提供サービスの用途について
#信用情報として参考に
債務者の支払い能力を調べるのが、主な用途の一つです。事業者によっては、現在消去されている情報も扱っているため、過去の破産事実を調べることもできます。
会社役員などの経歴調査
会社役員の中には破産すると退任手続きが必要になるものがあるため、調査は重要です。そこで、これらのサービスの活用が考えられます。
免責の確認
破産すると、一部の債務が免責になるのが法律上の決まりです。もしも債務が免責になると、債権者は督促手続きを取ることができません。免責許可がなされたかを確認するために、破産者情報提供サービスの使用を検討するケースが考えられます。
債権の管理
売掛金などが回収不可能になったことも確認可能です。よって、損失を計上する際の情報収集に活用できるでしょう。
結婚相手の情報を調べる
結婚を考えているパートナーがいる場合、身元調査の一環として活用することも考えられます。実際に、ネット上で出会った相手が破産していたと、この手のサービスによって判明した事例があったようです。
破産者情報提供サービスに問題はないのか
結論としては、問題がある可能性は否定できないため、注意を要します。なぜなら、通常は細心の注意を払って扱うべき個人情報が不正に利用されている恐れがあるためです。例えば、個人情報は基本的に第三者に提供する時には本人の同意を得る必要があります。また、公開されている情報もあらかじめ決めた利用目的以外で使うことはできません。これらの法規制に関し、サービス提供者は合法的に利用していると公言しているものの、実態は不透明です。これまでに、個人情報保護委員会によって停止措置がなされたケースがあることを考えても、既存のサービスが必ずしも信頼できるとは言えないでしょう。
そのため、掲載された方はもちろん、情報を利用する側も細心の注意が必要です。サービスによっては、不正に取得した個人情報を使っている可能性があります。結果的に、利用者側も不祥事に巻き込まれる可能性があるため、情報収集には公的サービスも検討するなど安全を重視しましょう。個人情報を他の事業者から受け取る時や自社で運用する場合には、複雑で細かい規制があるため、専門家への相談も考えておくと安心です。
自身が掲載された場合のリスクと対策
放置すると危険
官報やブラックリストに関しては、一般の人が目にする機会は多くありません。しかし、ネット上で情報提供がされていると、自身が破産した事実がより多くの人に知られることになります。実際に、ネット上でも自身が掲載されていたり、知り合いの情報を見つけたというケースはあるようです。もちろん、職場や取引先に知られる恐れもあります。近年は破産者に関しては詐欺の対象になる事件が複数起きていますから、早めの対策が重要でしょう。
情報拡散による被害
破産者本人はもちろんですが、その家族などの情報が特定され、拡散される恐れがあります。特に信頼性が低いサービスではセキュリティの脆弱性から、不正アクセスによる情報漏洩が懸念されます。当然、他の名簿業者が不正な利用目的で入手する可能性もあります。個人情報はひとたび不正業者の手に渡ると次々と転売されて情報が拡散しかねませんので、掲載されているのを発見したら早めに対策することをおすすめします。
消去費用がかかるケースに注意
破産者情報提供サービスの中には、破産者の情報を消去するための手数料などを請求している場合があるようです。手っ取り早く消すには、ある程度の出費は止むを得ないと考えるかもしれません。しかし、自身が望んで掲載されたわけではないのに、情報を消すのに費用が掛かるのは不自然です。焦って安易に支払わないよう、冷静に判断しましょう。
自身で対処せずに専門家に相談しよう
破産者情報提供サービスの多くは、個人情報の公開は法的根拠に基づいていると公表しています。公開されている官報に基づいた情報な上、適切に扱っているから問題ないと言う認識です。そのため、プライバシー侵害や個人情報保護法への抵触、名誉棄損の該当など違法性はないと主張しています。これに対して個人で働きかけても、合法だと押し切られるかもしれません。押し問答が続くと、嫌な思いをすることもあるでしょう。
そこで、対策としては弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。穏便な解決手段から法的措置まで提案してくれますので、様々なニーズに対応可能です。大ごとにしたくない時や確実に掲載を取り消したい場合にも適切に対処してくれます。専門家には法的知識はもちろん、交渉のノウハウもあります。心理的にプレッシャーを与える方法を知っているため、裁判になる前に決着がつく場合も珍しくありません。
弁護士を選ぶ際にはI、T関係や個人情報に関して実績がある法律事務所を探すのが有効です。関連知識やノウハウを持っている可能性が高まりますから、スムーズに解決したい時には検討してみましょう。
他の相談窓口はあるか
手軽に電話相談ができる点で、個人情報保護委員がおすすめです。個人情報保護委員は行政が設置している機関の一つで、相談を受けるだけではなく、立ち入り調査や各種命令を出す権限も持っています。実際に不正と判断されたサイトに対して、運用の停止命令を出したこともあります。個人情報について詳しいため、直接的に事態が改善しなくても、適切な対策方法や注意点などをアドバイスしてくれるでしょう。上手に活用すると、解決の糸口が見つかる可能性があります。なお、個人情報保護委員に相談できる内容は多彩です。法律に関する基礎知識の他、相手方に対する苦情の伝達なども含まれています。
これまでのトラブル事例
2019年3月に、破産者情報提供サービスの一つが大きな注目を集めた事件がありました。このサービスは検索エンジン大手の地図アプリに大量の破産者情報を蓄積し、公開していたのです。破産者は精神的苦痛を受けただけではなく、悪徳業者に個人情報が流出するなどして被害が拡大しています。これを受けて被害者はもちろん、一般のネットユーザーや報道陣も加わり、サービス提供者は激しい批判に晒されました。
被害規模の大きさから弁護団が結成された他、国会でも質疑応答の対象となっています。最終的には個人情報保護委員が停止命令を出したこともあり、サービス提供者側は自ら情報公開を取りやめるに至りました。この時に指摘されたのが「個人情報を取得する際の通知義務」や「第三者に提供する場合の制限」などの法規制に対する違反です。既存サイトの中にも、もしかしたらこれらの規定に反した運用をしているところがあるかもしれません。なお、この事件以後も似たようなサービスを提供していて、サイト運営の停止命令を受けた業者があります。
サービスが停止した後も被害者が損害賠償を求めて、裁判が行われることになりました。この事件に関与した弁護団はやや珍しい破産者情報の公開という事件に関してノウハウがありますので、同様の被害を受けた方はチェックしてみると良いでしょう。各弁護士のサイトで色々な情報が公開されているため、参考になる情報が得られる可能性があります。
破産者情報提供サービスは慎重な判断が大切
破産者情報提供サービスは、不正・違反行為に繋がるリスクが考えられます。そのため、利用のための会員登録や同じような形態のビジネスを考えている場合は慎重な判断が必要です。サービス提供者側が合法だと主張しても、今後どうなるかは不透明です。法改正や行政指導などによって消滅する可能性もあります。なお、情報を掲載された方は早めに対応を検討しましょう。ご紹介したように、放置すると情報拡散などのリスクがあります。